2012-01-02(Mon)
マザーイヴ 4
≪新生命誕生 4≫
生島はゆかりの腕にへばりついている物体をしかめっ面で見ていた。
「先生? 先生? どうかしたんですか?」
「あっ、いやいや、ごめん。 いやなんていうか、動きが早いなと思って」
「そうなんですか」 ゆかりにはわからない。
「いや、僕のときと違って動きがあきらかにいい」
「そうなんですか?」
「いや、その、なんとなく…喜んでいるみたいだ」
「ホントですか?」 新しいペットに気に入られて嬉しかったが少し不安になった。
「いやいや、ごめん。君が垢まみれという訳じゃないんだよ」
「当たり前でしょ。 そんな!」ゆかりは口を尖がらせて文句を言った。
「ゆかりちゃんが綺麗な女性だから喜んでいるんじゃないかな」
先生にしてはかなり無理した言葉、普段そんなことを言う生島ではないのでゆかりはおかしかった。
ゼリー状広がったミトコンドリア“ミンク”は肘まで登ると早く上にあがりたいのか?
懸命に触手を伸ばし二の腕にさしかかろうとしている。
ゆかりは通り過ぎた手首から肘までの間がツルンツルンになって皮膚が輝いているように見え、
内心綺麗になったと喜んでいた。
フト生島を見ると険しい眼差しで生命体を追っている。
ゆかりにはわかっていた。研究者の目だ。
こうなれば何を話しかけても無駄。
研究にのめりこんだ生島は目も耳も持たなくなってしまう。
生命体は二の腕から一気にスピードを上げると肩に登ることはせず、
ノースリーブのワンピの脇、鎖骨あたりから服の中に入ってしまった。
ゆかりは少し怖くなってきた。
「先生! 先生!」
「ゆかり君!申し訳ないけどもう少し様子を見さしてくれ。 もう少し、様子を見たいんだ」
「でも、先生」
「いざとなればボクが何とかする。 だからもう少しそのままで様子を見させてくれ」
「どうかしたんですか?」
「生命保存の本能だよ」
「?」
「あらゆる生命体は何かの栄養分を摂取して生命の保存をはかる。 それと…」
「それと?」
「種族保存の本能だよ。 生きているものはすべていつか死ぬ。
でも自分が死んでもその子孫を必ず残していくもんだ」
「…」
「このミトコンドリアはバクテリアなんかの動物性たんぱく質を好んで食べる」
「はい…」
「あとわからないはどうやって子孫の残す運動をするかだ」
「…」
「この生命体は無性類だから精子や卵子を作らない。 体を大きくして分裂していくことが唯一の種族保存のはずだ」
「…」
「なんとなくその準備に入ったような気がするんだ。 だから申し訳ないけどもうちょっと我慢してくれ」
「はい…わかりました」
生島はゆかりの腕にへばりついている物体をしかめっ面で見ていた。
「先生? 先生? どうかしたんですか?」
「あっ、いやいや、ごめん。 いやなんていうか、動きが早いなと思って」
「そうなんですか」 ゆかりにはわからない。
「いや、僕のときと違って動きがあきらかにいい」
「そうなんですか?」
「いや、その、なんとなく…喜んでいるみたいだ」
「ホントですか?」 新しいペットに気に入られて嬉しかったが少し不安になった。
「いやいや、ごめん。君が垢まみれという訳じゃないんだよ」
「当たり前でしょ。 そんな!」ゆかりは口を尖がらせて文句を言った。
「ゆかりちゃんが綺麗な女性だから喜んでいるんじゃないかな」
先生にしてはかなり無理した言葉、普段そんなことを言う生島ではないのでゆかりはおかしかった。
ゼリー状広がったミトコンドリア“ミンク”は肘まで登ると早く上にあがりたいのか?
懸命に触手を伸ばし二の腕にさしかかろうとしている。
ゆかりは通り過ぎた手首から肘までの間がツルンツルンになって皮膚が輝いているように見え、
内心綺麗になったと喜んでいた。
フト生島を見ると険しい眼差しで生命体を追っている。
ゆかりにはわかっていた。研究者の目だ。
こうなれば何を話しかけても無駄。
研究にのめりこんだ生島は目も耳も持たなくなってしまう。
生命体は二の腕から一気にスピードを上げると肩に登ることはせず、
ノースリーブのワンピの脇、鎖骨あたりから服の中に入ってしまった。
ゆかりは少し怖くなってきた。
「先生! 先生!」
「ゆかり君!申し訳ないけどもう少し様子を見さしてくれ。 もう少し、様子を見たいんだ」
「でも、先生」
「いざとなればボクが何とかする。 だからもう少しそのままで様子を見させてくれ」
「どうかしたんですか?」
「生命保存の本能だよ」
「?」
「あらゆる生命体は何かの栄養分を摂取して生命の保存をはかる。 それと…」
「それと?」
「種族保存の本能だよ。 生きているものはすべていつか死ぬ。
でも自分が死んでもその子孫を必ず残していくもんだ」
「…」
「このミトコンドリアはバクテリアなんかの動物性たんぱく質を好んで食べる」
「はい…」
「あとわからないはどうやって子孫の残す運動をするかだ」
「…」
「この生命体は無性類だから精子や卵子を作らない。 体を大きくして分裂していくことが唯一の種族保存のはずだ」
「…」
「なんとなくその準備に入ったような気がするんだ。 だから申し訳ないけどもうちょっと我慢してくれ」
「はい…わかりました」